私のFPSの原点は碁にあります。
囲碁とは?
囲碁がどういったゲームかご存じでしょうか。
「ヒカルの碁」で知ってる方も多いかもしれません。端的に言えば陣取りゲーム、エリアリング合戦ゲームです。
昔は軍略囲碁という形で戦の策略を練るためにも使用されていました。故に囲碁はFPSの考え方と非常に近いものがあります。
FPSは決して反射神経を競うゲームではありません。いかにチームにとって都合の良い陣地を制圧し、一方的に相手を撃てるかどうかの戦いです。
布石を打つ
ポジショニング
先を見据えてあらかじめ石を配置しておくことを「布石を打つ」と言います。
囲碁から派生して日常でも使われるようになった単語です。(駄目、先手必勝、一目置く、盤石、一石を投じる、等も囲碁用語)
FPSで言えば”布石”は”ポジショニング”にあたります。
予め取りたいポジションに人を配置しておく、高台を取っておく等、FPSにおいても布石を打つことは立ち回りの基礎中の基礎と言えます。
エリアリング
ポジショニング次第で次はエリアリングという概念が生まれます。
エリアリングとはそのチームの人が自由に動けるエリアのこと、あるいはそのエリアを広げることを指します。
エリアリングはパッと目に見えるものではありません。囲碁でもFPSでも戦いが入り乱れるほどエリアは複雑なものとなっていきます。
今回は囲碁を交えながら、FPSにおける複雑なエリアリングをイメージしていく記事となります。
囲碁で例える
ポジショニング
囲碁では試合が始まるとまず、互いに布石を打ち合って何となく取りたい陣地を決めます。
FPSで開始早々相手に飛び掛かっていかないように、囲碁でもまずはポジショニングを行います。
こんな感じ。
エリアリング
今回のポジションによってエリアリングはこのようになりました。
可視化してみましょう。
少し白がアグレッシブにエリアを広げていることがわかります。
このままでは黒はどんどん窮屈になっていく。どこかで試合を変える一手を放たなければなりません。
ここからエリアリング争奪戦が始まります。
エリアを変える一手
悪手
まずはエリアが変わりそうにない黒の手から見てみましょう。
このように打った場合はどうでしょうか。
確かに右側の黒の陣地は固くなりました。しかし黒のエリアは先程とほとんど変わりありません。
次は白番、どんどん左側の白が固くなっていきます。黒はまだスペースがある内にエリアを拡げるための一石を投じておきたい。
好手
次のような黒の手ならどうでしょうか。
黒が左下の白にかかっていきました。
無謀に見えるようで、左下の白とは少しだけ距離を取った簡単には取れない一手です。
この一手によるエリアの変化はこちら。
この黒の1手でこれだけ黒のエリアが大きくなりました。
この手に対して白は策を講じなければならない。放っては置けない。白にとって否が応でも考えさせられる一手となっています。
なぜこの一手が必要なのか
踏み込む一手
FPSでは撃ち合いやキルによって離れた位置からもエリアリングが可能です。
ところがFPSにはマップの高低差やオブジェクト、ルール上の攻守が存在する為、必ず撃ち合いには有利不利がつきまといます。
時にはこの手のように強引に身体を割り込ませることで、相手のエリアを奪取する動きが必要となります。
この一手をFPSに例えると
今回の黒の手はかなり踏み込んでいる為、粘り強いキャラクターが得意とする手です。
OWで言えばタンクやフランカー、Valorantで言えばジェットやレイズのエントリーに近い一手です。
自分が耐久可能なラインまで前線を上げることでチームのエリアを拡げ、味方に選択肢を提供します。
この手をキッカケにまだまだエリアリングは続きます。この後の展開を見てみましょう。
エリアリング合戦
戦いの続き
この形から
黒が白にかかるようなエントリー。
入ってきた黒を切り取る白。
左上の孤立した白を狙いつつ、下の黒の逃げ道確保。
狙われた白は逃げるルートを作る。
黒は左側にエリアを作り始める。
上の白の延長線上にある孤立した黒を、逃げ道を防ぎながら狙う。
最終イメージ。
FPSにおけるエリアリング
非常に難しい要素
エイムやテクニック面を磨くことは努力次第でそう難しいことではありません。実際、技術に優れたFPSプレイヤーは大勢います。
しかしエリアリングに優れたプレイヤーはそう多くない。例えトップレートでも全員が持っているとは言い難いと思います。
エリアリングの感覚を掴むためには、囲碁のように俯瞰視点で戦場を見る必要があります。
FPS上級者
なぜFPS上級者は勝てるのか。それはエリアリングで優位を取ってから勝負を挑むからです。
一見序盤から戦っているシーンも実はエリアリングのために戦っていることが殆ど。状況が厳しいと判断したら立て直します。
特にスポーツ系のFPSと言われるOWやAPEXはこのエリアリングの段階でほとんど勝負が決まります。
個人の技術量に違いがなくても、エリアリング次第では一方的な形勢がつくことも少なくありません。
敵の場所がわかるようになる
エリアリングは索敵とも大きく関わりがあります。
FPSの上手いプレイヤーが敵の場所が手に取るようにわかるのは、敵のいない場所がわかっているからです。
エリアリングと視野によって敵陣を狭めることで、敵の位置を限定しています。
FPSには囲碁の要素が満載
エリアが広く取られていても固まれば強かったり、あえて小さい石を捨てて相手の大石を狙いに行ったり、怖くない石は無視でよかったり。
囲碁にはFPSに共通することが山ほどあります。また気が向いた時にまとめようと思います。
まとめ
今回の記事で少しでも囲碁に興味が持てましたらプロの対局を一度見てみてください。
ルールがわからなくても何となくエリアリングの攻防が見て取れると思います。
今回の画像で使用した布石は井山氏 vs 一力氏のNHK囲碁杯のもの。井山氏は日本のトップ棋士、一力氏は若手最有望株です。(2017年執筆時)
[追記]
動画が消されてしまっていたので、別の一局を貼っておきます。